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2013年のバレンタイン数日前。(※3-1『思い出の逆転』の数ヶ月前)
その頃の、千尋さんと真宵ちゃんの電話での会話です。
台詞ばっかりです…。


《 2013年 2月 》

「どうしたの? 真宵。 急に電話してきて」

「『どうしたの?』じゃないよお姉ちゃん!
 今月入ってからあたし、『まだかなまだかな』って、
 お姉ちゃんからの連絡、ずっと待ってたんだからね!」

「……そうなの?」

「…………。……もしかしてお姉ちゃん、すっかり忘れちゃった?」

「……ごめんなさい、真宵。ちょっと…、思い当たらないわ」

「もう…… バレンタインだよバレンタイン!」

「……あ。」

「去年一緒に作ったときに、約束したでしょ?
 『また来年も一緒に作ろうね!』って……
 この週末逃しちゃうと、もう間に合わないよお姉ちゃん!」

「…………」

「……お姉ちゃん? ……もしかして、本当に全部忘れちゃった?」

「ううん、覚えてるわ。そういえば去年あなたと一緒に作ったわよね。
 最初ちょっぴり焦がしちゃったり、なんだか面白い形にしちゃったり。
 いっぱい味見もして……、楽しかったわ」

「うん! だから今年も…」

「ごめんね真宵。お姉ちゃん今年は無理なの」

「え。」

「それどころじゃないのよ」

「でもでも! 事務所の皆さんに配るでしょ!?」

「……そうね、でもいいの、今年はお店で買うわ。」

「えええええええーーー…そんなあ…
 あたし、楽しみにしてたのに…」

「もう、しかたないわね。ちゃんと真宵の分も買ってあげる」

「へ?」

「食べたいんでしょ? 去年だって、真宵ったら
 自分が渡す分なくなるくらいに味見しちゃうんだもの、
 ふふ、あれはびっくりしちゃったわ」

「もう…笑わないでよお姉ちゃん」

「ふふっ、今年もいっぱい味見するつもりだったんでしょ?
 かわりに去年と同じくらい美味しいチョコ、買ってきてあげるから、ね」

「……お姉ちゃん。……」

「なあに? 真宵」

「あたし別に、チョコだけが目当てで、楽しみにしてたんじゃないんだよ?」

「…………」

「去年、楽しかったから…。泊りがけで、まるまる一日
 お姉ちゃんと一緒で、たくさん話して笑って…。」

「……そうね」

気づいてたわ。

「すごく楽しかったわ、お姉ちゃんも。……だけどね、真宵」

だからこそ、無理なの。

「今年は無理なの……どうしても。」

楽しかった一年前のようにはなれない。

「……ごめんなさい、真宵。」

あの日と同じように振舞える、自信なんてないのよ。



「…………うん、わかった。……あたしこそ、わがままいってごめんね」

「ううん、そんなことないわ。気にしないで」

「………でもさ、お姉ちゃん。」

「なあに?」

「…………ううん、まさか、お姉ちゃんに限って…。そんなこと、ありえないよね」

「なによ……、なんのこと?」

「…………まさか、お姉ちゃん…
 失恋しちゃった?」

「…………」

「なーんちゃってね! いやまさかね、お姉ちゃんに限って
 そんなことあるわけないだろうけどさ!
 でもお姉ちゃん、ちょっといつもと様子が違うような…
 ってね、ごめんごめん! 冗談だよ!」

「……ばれちゃったら、しかたないわね」

「そうそう、冗談だから……って、……え。」

「そうなの、だから今年はちょっと、ね。ごめんね真宵」

「ええええええええええっ!」

「……そこまで驚くほどのものかしら」

「驚くよ! って、ホントなのお姉ちゃん!?」

「残念ながら、ね」

「うわー、信じらんない! それあれだよ、
 お姉ちゃんにつりあう自信がなかったダメオトコだよ!」

「……そこまで弱気な人かしら」

「なんにせよ、ふってーヤロウだね! ソイツは」

「ふふっ、そうね……強い人だったわ」

過去形になんて、したくないけど。

「……お姉ちゃん!」

「なあに? 真宵」

「あたしはここにいるからね!」

「……真宵?」

「つらいときとか、いつだって電話してくれていいし、
 帰ってきてくれていいし。いつだって…
 お姉ちゃんはあたしの自慢だし、
 いつだってあたしは、お姉ちゃんの味方だから!」

「真宵……」

「あ。……まあ、そりゃね、あたしなんかじゃ
 何もできないかもしれないけどさ! でも……」

「そんなことないわ」

「……ほんと?」

「ええ。本当よ。
 真宵、あなたがいてくれて、お姉ちゃん本当に助かってるわ。」

あなたがもしいなかったら、きっと。

私は、ここには立っていられない。

「……へへ、よかった!」

ただの私のわがままなのに、嬉しそうにされると、胸が痛むわ。だけど。

「ありがとう、真宵。」

わがままなお姉ちゃんでごめんね。

だけど、本当に、ありがとう。

あなたがいてくれて、本当によかった。



「じゃあ来年! 来年元気になってたら、また付き合ってね? チョコ作り」

「……そうね」

いつか彼が、目を覚ましたら。

その日が来ることを、私はいつまで信じていられるかしら。

だんだん、わからなくなってくる。だけど。

「わあい! 約束だよ、お姉ちゃん!」

信じるための自信が、たとえ足りなくなっても。

「ええ、楽みに待ってるわ。真宵」

あなたの声が、あなたの気持ちが、
私にその力を、もう一度与えてくれるわ。

「じゃあ、またね。お姉ちゃん!」


いつだって。

きっと、何度でも。




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■言い訳コメント■

…………ええと、なんだか、
コメントに困る話ですみません…
いつもながらいろいろと捏造です。
(ちなみに、以前同人誌で書いてた漫画のエピソードとは
 繋がっててもそうでなくても、別にどちらでもいいと思ってます)


でもこの時期の千尋さんって、
日々の生活には慣れてしまっていても
3-4の事件からちょうど1年になるわ
美柳ちなみのことについても全然解決しそうにないわで、
かなり大変そうです。

というわけで唐突にそんな会話ネタを思いついたので
書きなぐっちゃいました。

でもこれだけははりきって言えます。

綾里姉妹も大好きです!
(カミチヒネタ考えていたはずがいつのまにか姉妹エピソードに
 シフトしていた、ということが、わりとあるくらいに…)


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全然方向性変わって、
なんでもできる千尋さんに嫉妬しちゃたtりする真宵ちゃんとか
その明るさだけで皆に愛されちゃう、ようにも見える真宵ちゃんに
途中まで厳しくがちがちに育てられた分それが虚しくなる千尋さんとか、
そんな感じで実はお互いにお互いを羨んでいて
「大好きだけどときどき大嫌い」とかな姉妹でも
それはそれでいいと思ってます…!
(ていうか、それでもやっぱりお互いが大事、とかそういうので)

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