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※家族企画2に便乗するつもりで間に合いませんでした。
オド→ミヌでオドVSナルみたいなテキスト。
※オドロキくん一人称そしてわりとポエミィです
※というか失恋ネタで暗いですすみません…
「きみの家族は生きているよ」 そう言って成歩堂さんは嘘みたいな話をしはじめた。 ラミロアさんがオレの母親だってこと。彼女の新しいプロモーションビデオで一瞬見えた片腕の腕輪がその証拠だと、そう言われても到底信じられなかった。 「それだったらオレじゃなくて、 みぬきちゃんと彼女が親子だと言われた方がよっぽど信じられますよ、 行方不明の母親とよく似ているんだから」 笑いながらそういうオレの言葉に、よくわかってるね、と成歩堂さんはうなづいた。 「きみたちは兄妹なんだよ」 信じられずにどんなに彼を見つめても、腕輪の反応はなかった。それでも、信じられなかった。 家族なんてオレにはもういないと思ってた。 でも実はいた、しかも二人も。 すごく嬉しいことじゃないか。まるで夢みたいだ。 ……なのに、なんでオレはこんなに、泣きそうな気持ちなんだろう。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「今のキミの愚痴、誰の話か知らないけど、まるで好きな子への文句みたいだね」 みぬきちゃんへの愚痴をそれとなくつぶいたときに言われた言葉。 そんなわけないと否定すると 「恋を恥ずかしがるなんて、まるで中学生、いや小学生レベルだね」 とわかったように笑われ憤慨した。 けれどガキ扱いされっぱなしもシャクだし、たしかに大人げないかもしれないと、彼女への気持ちを真面目に考えてみた。 そこで自問して、初めて自覚した。 オレひょっとして… みぬきちゃんのこと、好きなのか? オレの方が年上なんだから、男なんだから。 守ってあげなきゃとは思ったりする。頼られたいとも思う。 そして触れられるとどうしていいか分からなくなって困る。たんに女の子に慣れてないからなんだけど、それと好きとの線引きはどこだろう。 だいいちまだ中学生だし。 だけど、 「好きなのかもしれない」と思ったら、それを認めたら。 途端に、驚くほど嬉しい気持になった。 今まで毎日生きるのに精一杯で、恋愛なんて、綺麗なお姉さんに憧れるくらいで自分には縁遠いものだと思っていた。その方がいいとすら強がっていたそんなオレだけど。 会いたいとか笑顔が見たいとか、思わずはしゃいじゃう気持ちが自分にも沸き上がるなんて。生きてる実感とか、世界がバラ色のようだとか、こういうことだったのかななんて、初めてそんな高揚感を味わった。 そんな気持ちに胸がいっぱいになったのは、つい昨日のことだったのに。 ◇◇◇◇◇◇◇ |
「みぬきにもこれから話すよ、もうすぐ帰ってくるだろうから」 沈黙をやぶって出された彼女の名前にうろたえる。この場にいたくなかった。 突然のことで頭が混乱してるので帰ります、というと成歩堂さんはそう、と小さく呟いてオレをじっと見つめた。耐えきれず、さっさと立ち去ろうと、失礼しますと軽くお辞儀をする。そのときに聞こえた彼の言葉にオレは目を見開く。 「ごめんね」 その意味を、何も考えられずにただ顔をあげ同時に彼をにらみつけた。 何であやまるんですか、そう問いかけると少しの間の後、なんとなく、とふざけた返事が返ってくる。 「きみが傷付いてるように見えたから」 頭に血が上って腕に力が入る。腕輪の反応がないことに余計にいらつく。 「…また殴られたいんですか?」 なるべく抑えた声でたずねる。 「いや、できることなら遠慮したいね。痛いのは好きじゃないから」 だけど、と一息おいて彼は続ける。 「きみには、あと2、3発は殴られても……しかたないかな、と思ってる」 握り締め過ぎている自分の拳が痛い。 自然といっぱいにくいしばっていた歯を意識してゆるめて、ようやくオレは口が開けた。溜め息まじりに声を絞り出す。 「……別に、オレだって、人をむやみに傷付けたいとは思ってませんよ」 そういうがむしゃらな時期は過ぎました、というオレの言葉に、そいつは助かった、と成歩堂さんは軽く答えた。 目の前の妙に爽やかな、殴りたくてたまらない笑顔をふりきってオレは事務所の出口へ向かいドアを開ける。 「……ぼくも別に、大事な家族を傷付けたい訳じゃなかったんだけどね」 言いそびれたのは事実だけど、と続いたひとりごとのような言葉に、返事をせずにオレはドアをくぐっていった。 ◇◇◇◇◇◇◇ どう帰ったのかは覚えていない。いつのまにかオレは自分の部屋にいて、朝きれいにたたんだ布団を広げもせずにそのまま倒れこんでいた。 何も考えたくなかった。だけど頭から離れなかった。 「きみの家族は生きているよ」 オレの腕輪とまったく同じラミロアさんの腕輪。 どこか彼女に似ているみぬきちゃん。 「きみたちは兄妹なんだよ」 家族なんてオレにはもういないと思ってた。 でも実はいた、しかも二人も。 すごく嬉しいことじゃないか。まるで夢みたいだ。 ……なのに、なんでオレはこんなに、なんで、 涙が止まらないんだろう。 目をギュッとつぶっても止まらない涙を、隠すように腕を目元に当て、嗚咽をこらえもせずにただひたすら泣き続ける。 こんなに本格的に泣いてしまっているのはいつ以来だろう。 だけどこれは嬉し泣きだ。 だってどんなに悲しくても泣かないと心に誓った。だからこれは嬉し泣き、そのはずなんだ。 もういないと思っていた家族が、二人もいた。 それは本当に嬉しいんだ。嬉しくてたまらないんだ。 だけど。 今のオレの胸にはいろんな思いがうずまいて、かき乱されてまとまらない。 こんなんじゃ、しばらくは日記も書けそうもない。今日の正直な気持ちなんて、言葉にならない、いつまでも書き終わる気がしない。 しばらくして、大きく溜め息をついて、泣きすぎてうまくできずにいた呼吸を整えていく。ゆっくりと目を開け乗せていた腕を少しずらして、いつものオレの部屋の天井と、うっすらと目に入る腕輪の煌めきを呆然と見つめる。 鈍いけど妙に印象的な輝き。オレと彼女たちを繋ぐ大きな証。もう一度ぼやけていく視界の中、頭では同じ言葉がまわる。 “さよならだ” 芽生えたばかりのこの気持ちは、忘れなきゃいけないものだから。 日記は書けそうもないけど、さっきからまわってるその言葉だけ、胸に刻んでおこうとそう思う。 “さよなら、オレの” 昔聴いた歌にあったような、幼いこの気持ちにぴったりな。 “さよなら、かわいい恋心” <END> |
オドロキくんの日記はヒーローものの暑苦しい解説風か、
歌に似合うくらいの、日常生活にはちょっと照れくさい文句が並んでそうなイメージです。
(ちなみに最後のフレーズのイメージは、実際の歌詞とは変えてますがCoccoの『ポロメリア』からです。)
本当は家族企画2のおどみぬ日に便乗するつもりで
通勤電車内でちまちまメールに打って数日書き進めたものの、結局間に合わなかった話です。
オドロキくんが泣くところまでは書いてたので惜しい気持ちでした。
でも特に幸せでない話なので、むしろ間に合わなくて正解だったんじゃないかとも思います…
回想シーンでオドロキくんと話してるのは一応牙琉検事さんを想定してるんですが、
成歩堂パパだったら鬼だな…とも思いました。
おどみぬは人様の作品見てたら「ありだ…ていうか好きだ…」と思っちゃうんですが、
自分がゲームクリア後に「恋愛を意識した場合だったら」、と真っ先に妄想したのはこういう内容ばっかりでした…
ハッピーエンドも大好きなんですが失恋ものも大好きですみませんすみません。
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