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牙琉検事と茜ちゃん関連の妄想で、「自分で描くならこれくらいかな」、と
唯一妄想できている話があるのを、テキストでまとめてみたりしました。
「×」ってよりはVSというか、まるで茜ちゃんの方が
少し惚れてるかのように見えるかもしれませんが
描いてる本人としては両方とも恋愛感情以前、な感じで、
正直、とても険悪です。
…でも、これくらいも大好きです。


 裁判所の廊下、検事用の控え室すぐ近くでその後姿を見つけた。あまり関わりたくない相手、それにどう声をかけるか少し考えていると、目の前のじゃらじゃらした男は自身の横にある壁を思い切り叩いた。強い衝撃音の後、響くように鎖が小さく鳴る。少しだけ驚いたけれど、法廷で聞き慣れていたその一連の響きに、少し落ち着きもして。
 だから、つい……悪ノリしてしまった。どう考えても、余裕がなさそうに見えていたのに。

「物にあたるだなんて… みっともないですよ。響也」

「…っ! 兄貴…!?」
 突然発せられた静かで冷たい声に、目の前の男…牙琉響也検事は息を飲み、その声の持ち主のはずの相手を呼びながら勢いよくこちらを振り返った。そうして、目の前に現れたあたしの姿を見て顔をしかめる。予想どおりの反応。それが、普段のコイツの人よりも一段上にいるような態度に比べたら、とてもおかしく見えて、思わずにんまりと笑ってしまう。
「またひっかかったわね」
「………刑事、クン」
 いつもの営業スマイルが台無しなその顔に、あたしは笑みを消すことができないままだった。少しの間無言であたしをじっと見た後、長い足を大きく動かしてこちらに近づいてくる彼を気にせずに、ついしゃべり続けてしまう。
「今の振り返ったときの検事の顔、なかなか面白かったですよ…」
 そう言い終わらないうちに、すぐそばまでやってきた彼はその勢いのまま、いつものように少し前へ体を倒してきたかと思うと同時に、あたしのすぐ横の壁を強く叩いた。
法廷で聞くよりもずっと近い衝撃音に思わず肩がすくむ。音に導かれるまま向かった視線の先には、あたしが殴られたっておかしくない距離に置かれたままの拳があった。少しおびえながらも、壁に向かっていた視線を彼の方へ戻して精一杯強気に怒鳴りあげた。
「…なによ! 天下のスーパースター様が、こんな冗談で手を上げる気?」
 睨みながらそういったものの、目の前、今までになく近くにあった顔のあまりに真剣な表情に、恐くなる。
「……キミは、
 捕まったお姉さんのことを、面白半分でからかうヤツを許せるかい?」
「…!」
 姉のことを持ち出され、言葉を失う。
 なんで、なんでコイツがそんなことを。
 言われたことの意味よりも、大切な大切な姉のことを口に出された、そのことにうろたえながら、何も言えずに目の前の顔を睨み続けた。それと同じようにあたしを睨み続ける彼の、いつもよりずっと厳しい目が一度伏せられる。続けて聞こえてくる大きなため息。離れた視線に安心したのも束の間で、再び間近で睨まれる。
 恐怖すら感じるような強い視線、だけどどうしても、目が離せなかった。
「キミのイメージとは違うのかもしれないけど、ぼくは、そこまでヒーローでもお人好しでもない。
 もう二度とやめるんだね。……次まで、許せる保障はできないよ」
 そう言って、あたしのすぐ横の壁に伸ばしたままだった拳を自分の腰に戻しながら彼は体を起こし、すぐに後ろを向いた。そのまま、元いた場所の方へ歩き出す彼を、思わず呼び止める。
「…ちょっと! 待ちなさいよ!」
 立ち止まって、首だけ少しこちらへ向ける彼に、さっきから頭をまわり続けていた疑問を投げかけた。
「何でお姉ちゃ…姉のことを知ってるんですか」
 その質問に、あきれたような顔で彼は笑い、もう一度こちらへ体を向けて答える。
「立場上、身元調査がてら刑事に関しても経歴書等の書類を見せてもらうこともある。
 そしてたった数年とはいえ、主席検事だった彼女のしでかしたことは…大きい。
 ……それでいて、そのことは、検事局でそう語られることのない、極力隠そうとしてる事実みたいだ。むやみに、再び世間の話題にあげられることがないようにね。
 だけど、隠されると調べたくなるものだろう? だから調べた。それだけさ」
 そんなこと、聞くまでもないんじゃないかな、と言わんばかりの哀れむような笑顔に、あたしは怒りを隠すことなくぶつける。
「それだけでも、なんでも。
 ……姉の話を無意味に持ち出す人のこと、あたし、…許しませんから」
 そう言って睨みつけたあたしを彼はしばらく見つめた後、尚更笑みを深くして言った。
「……そう。
 じゃあ、さっきのぼくの気持ちもわかるよね。」
 その言葉に、ようやく自分のやったことを思い返しした。あまりに気遣いのない行動に、自分でも目まいがしそうになる。
 だけど、平気だと思ってしまったのだ。目の前の彼になら、あたしが叶えたかった類の夢をやすやすいくつも叶えてるコイツになら。
それくらいしたっていいと、許されると思ってしまった。
「…ここまで言われなきゃわからない、その鈍さと無神経さは、ある意味賞賛に値するね。」
「な…!」
 笑顔のまま発せられた皮肉たっぷりの言葉に反論する間もなく、彼は言葉を続けた。だけど今度は、ひどく真剣な、厳しい顔で。
「悪いけど、謝らないよ。先に仕掛けたのはキミだ、刑事クン。」
「…っ」
「じゃあね、ぼくも忙しいんだ。失礼するよ」
 何も言えずにいるあたしに彼はかまうことなく、すぐに向こうへ向き直り、そのまま再び歩き始めた。
「……待ちなさいよ!」
 さっきと同じように、あたしは怒鳴るように彼を呼び止める。だけど彼は今度は振り返らず、立ち止まりすらしないで歩き続けた。その様子に、もう一度声をかけることもできずに、立ち去る後ろ姿を見えなくなるまで見つめる。
“………なによ。”
そう思いながら、
「……悪かったわよ」
小さくつぶやいた。……だけど。
“……謝る機会くらい、くれたっていいじゃない…”
立ち止まらなかった彼に、あたしはどこまでも自分勝手に、そう思った。



<END>



茜ちゃんのこと、実を言うと蘇るのときよりある意味好きなのですが(あの、けだるげな、そしてぶっちゃけっぷりが)、
それでも、本編中で茜ちゃんがやった牙琉霧人のモノマネは、個人的には
ものすごく唐突だった上に、正直無神経すぎるな…と思ったのでした。
なので是非、謝る機会かせめてそのことを気づかせてあげる機会は欲しいなと思ったので…。そういう話でした。

まあ、たぶんあれは単純に、ちょっとしたネタであり、プレイヤーに牙琉霧人の存在を思い出させるためであり、
彼に対する響也さんの態度を少しだけプレイヤーに見せたい、という意図だとは思うので、
それに茜ちゃんが使われただけという気もしないでもないのですが。
そして無神経な発言は、まあ、別にどのキャラにもいえることなんですが…(笑)。3までも含めて。

でもその中では、茜ちゃんのそれと、成歩堂の「使えないマスコット」発言がわりと印象的です。
どちらかというとマイナス方向に。(他にも他のキャラでもあった気もしますが。)
…それでも、成歩堂も茜ちゃんも、二人とも大好きなんですけどね…。
でもひどいッスよね… もうちょっと優しくてあげてもバチは当たらないと思いますですよ…
 (まあ、ちょっとムカッとくるくらいなのも、そういう距離感も美味しいといえば美味しいですが…)


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up<2007/09/06>
絵<2007/08/13>