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※注意!※ 4の設定前提で、4エンディング後のナルマヨです。
クリアまでのネタバレわからないと意味不明じゃないかと…。
  そして成歩堂と真宵ちゃんがくっついてて娘とかもいてもOK!
…という方以外は読まない方が無難な感じの妄想全開です。
かといって、そんなにいちゃつくわけでもないです。


《10月中旬 倉院の里 綾里家》

 畳敷きの部屋の中、座布団にあぐらをかいたり寝転がったりしてくつろいでいると、風呂上りらしく浴衣姿の真宵ちゃんが障子を開けて入ってきた。

「やあ、久しぶりだね」

 くつろいだ体勢のまま、特に立ち上がったりもせずに当然のように出迎える。

「あれめずらしい、来てたのなるほどくん」

 彼女の方もそこまで驚いた様子もなく、当然のように障子を閉めて、ぼくの脇にあったもう一つの座布団にしゃがみこんだ。

「レポート提出、たまにはしておかないとね。またすぐにたまってきちゃうし」

「とかいって、どうせ数行しか書いてないんでしょ。極秘任務はどうしたの」

「無事完了、ってとこ。だから久しぶりに来れたんだ」

「へえ、そいつはお疲れ様! じゃあさ、《感動の親子対面!》だったんでしょ?
 思わず泣いちゃったんじゃないの? なるほどくん」

「…なんでそういう話になるんだよ」

「だって、かわいい娘がずっと会えずにいた母親と再会、なんだよ?
 嬉し泣きの一つや二つ、見守ってきたパパならトーゼンでしょ!」

「あいにく、ぼくの涙はそういう単位じゃないけどね。
 だいいち彼女、二人に会っていかなかったし」

「ええええっ!なんで!?」

「ぼくに聞くなよ、彼女が決めたんだから」

 そう言って視線を外すと、真宵ちゃんの声が大きくなって響いた。

「そういう問題じゃないよ!
 …なんで、なんで無理にでも会わせなかったの!?」

「………真宵ちゃん?」

 突然怒り出した彼女に驚いて顔を上げると、少し涙目になっている目と目があった。

「会えるときに会っておくのがいいに決まってるじゃない!
 もう、どうしてなるほどくんはいつも、そういうところ抜けてるのかなぁ…」

「…………そうだね。そりゃ真宵ちゃんなら、そう思うよね」

 かつて彼女に降り掛かった事件を思い出して、少し目を伏せる。そうして落とした視界に入った彼女の手を左手で握り、そのまま真正面に向かい合うように座り直した。

「だけどさ真宵ちゃん。
 離れてたって、会えなくなるとは限らないよ。
 …まあ、近くたって会えなくなることもあるけど」

「だから…」

「もう会えなくなるかもしれないなんて、そればかり考えてるのもいいことだとは思えないよ」

「……別に、あたしだってそればかり考えてるわけじゃないけど」

「うん。」

 わかってる、と優しく笑う。そして手に力を込めた。

「…ぼくは思うんだけどね、人はそう簡単には死なないもんだよ。
 ぼくだって、真宵ちゃんだって。あんな目にあってきたけど、こうして生きてる。」

「なるほどくん……」

「簡単には死なないよ。そう、生きることに価値があるかぎりは。」

 ぼくのその言葉に、真宵ちゃんはうつむく。

「……それじゃ、簡単に死んじゃった人はどうなの」

「真宵ちゃん…」

「……あたしはまだ、せめて会えていたからいいよ。
 顔もわからなかったお母さんだけど、それでも。事実は知れたから。
 それにお父さんのことは、もとから、ほとんど覚えてないし。でも。」

 そう言って真宵ちゃんはぼくの手を握り返して、うつむいていた顔を上げる。

「でもみぬきちゃんは…、お父さんのことちゃんと覚えていて、
 いつか会いに来るって約束までしていて会えないままだったじゃない。
 せっかくあのとき、この国に戻ってきていたのに…」

「まあ、彼もやっぱり、みぬきに会う気はなかったみたいだけど」

「えええっ! …もうっ! 勝手すぎるよあの人!」

「それはぼくとしても同感だけど。…いろんな点において。」

「…だからせめて、みぬきちゃん、
 お母さんにはちゃんと、会えたらいいな…って。そう、思ってたのに。」

「真宵ちゃん……。」

 涙をこらえた少し震えた声に、彼女の気持ちが痛いほど伝わってくる。こっちの意思までぶれそうになるのを耐えて、言葉を選ぶ。

「…その気持ちは嬉しいよ、真宵ちゃん。みぬきのこと、そんなに心配してくれて。」
 だけどやっぱり、ぼくが無理に会わせるもんじゃないと思ったんだ。」 
「《ずっと一人きりだと思っていた自分に、二人も子供がいて、
 生まれ祖国で立派に過ごしている》
 それが彼女にとって生きることへの価値なら、きっと力になる。
 ……そうカンタンには死なないよ」

 そう言って、ずっと片手で握っていた彼女の手に、もう一方の手を添える。うつむいていた彼女の首が少し動く。

「言葉が足りなかったみたいだけど、もう亡くなってしまった人にそう思ってるわけじゃない。
 今を生きてる人に、そうだと思いたいんだ。…ぼくも含めて、ね。」

 真宵ちゃんは何も言わずにうつむいたままだった。それでも、握り返される手の力で、聞いてくれていることはわかった。

「7年前のあの頃。真宵ちゃんが倉院の里に帰って、
 あの依頼がきて、結果的に弁護士バッジを失うことになって。
 ……全て、何もかもを失った、終わってしまったような気持ちになった。
 それでも、あの事務所は残しておきたかった。どんなかたちでも。」
「そして何より、みぬきがいて、彼女をなんとかしなきゃと思った。
 ぼくが保護者ではあったけど…同時に、ぼくがあの子に救われたんだ。
 《この子を守らなきゃ》っていう役割ができて、それだからやってこれたんだと思う。
「だから、あの子を見守っていくことが、ぼくの生きがいみたいなもので…
 それこそ、今のぼくの、生きることの価値。…きっと、そうなんだろうね。」

「………………そう、だね。
 ちょっぴり、うらやましいな」

「え。」

「ううん。
 …だけどね、なるほどくん。これだけはわかっていてほしいよ。
 みぬきちゃんだけじゃない、他にもいっぱい、皆が。
 なるほどくんのこと、必要なんだからね。…たぶん、なるほどくんが思ってる以上に」

「…………うん、…ありがとう。」

 少し気恥ずかしいくらいの言葉が嬉しくて、せめて精一杯、ふてぶてしく笑う。はたから見たら「当然だよ」と言わんばかりの顔に見えそうだけど。
 それを見た真宵ちゃんは、安心したようなあきれたような顔をして、深くため息をつく。

「あーあ。…まあ、いいけどね。
 あたしだって今は、あたしのムスメが生きがいだもん」

 そういってにんまりと明るく笑う。その顔に、こっちまで明るく、嬉しくなる。

「そうだよ、うちの近況はそんな感じだけど…。
 そっちのムスメはどう? それもぜひ聞きたいんだけど」

「あー、なんかね、今日はもうすねちゃって大変だったよ。今はもう遅いから寝てるけど」

「すねたって…なんで?」

「来年小学校に入学じゃない? あの子。 だから色々要りようなんだけどさ…。
 なんかね、今年の春のうちから、テレビのCMで見てずっと楽しみにしてたみたいなんだ。
 キラキラの新品のランドセルを。でもあたしそのこと全然知らなくて。
 だからランドセルのこと聞かれたとき、
 『大好きなはみ姉のお古があるから、それでいいでしょ』
 …っていったら、怒り出しちゃって。 もう、アレは…相当アツイ激論だったね」

「春美ちゃんって、みぬきの一コ上だろ?
 あの子が1年生のとき買ったとなると、ちょうど10年前か…。
 それはまた、なかなか年季の入ったランドセルだね」

「ふっふっ、そんな程度の年季じゃないよ?
 なんせお姉ちゃんからあたし、あたしからはみちゃんへと、
 長年に渡って受け継がれた、由緒あるランドセルなんだから!」

「……それはまた、想像以上だね。
 (真宵ちゃんよりも年上のランドセルが、いまだにあるのか…)」

「もうさ、あの子ってば、まだちっこいくせして
 『いぎあり! いくらあたしがはみ姉のことすきだからって、
  おふるのランドセルがいいんじゃないもん!
  それとこれはもう、まったくのべつもんだいだよ!』
 …とか言っちゃってさ。
 いっつもムチャクチャな論理でこっち黙らそうとするんだよね。ハッタリも無駄にうまいし。
 変なところばっかりどっかの親戚のおじちゃんに似ちゃって、困っちゃうよ、ホント」

「そうかな。真宵ちゃんだって、よくムチャな論理言うと思うけど…。
 (それにその言い分、そんなに間違ってないぞ)
 …うん。母親似、とも言えるんじゃないかな」

「何ゆってんの! そっちでしょ!」

「いやいや、そっちだろ」

「違うもん!」

「はっはっはっ。…まあ、じゃあ、それでいいよ」

「……なんか、そういう態度。余計に腹たつなー、もうっ…」

 そういって頬を膨らませる彼女に、尚更微笑ましくなってしまう。
ずっと握っていた手に目線を落とす。こめていた手の力を緩め、軽く指を絡ませながら両手で撫でる。それに気づいた彼女の指もちょこちょこと動いて、くすぐったい、心地好い気持ちに包まれていく。

「…朝になったら娘のご機嫌とりでもしようかな。今回は何日かいるつもりだから」

「あれ、事務所はいいの?」

「大丈夫だろ。もとからよく、顔出さないことあるし。今はオドロキくんだっているし」

「……逆に心配じゃないの? 年頃の男女が二人っきり」

予想もしてなかった言葉に、一瞬だけ手が止まる。

「だってあの子ら、兄妹だぞ」

「あ、それは伝えてあるんだ?」

「…………。」

そういえばそうだった。
思わず手を止め、二組の手を見つめていた顔を上げる。

「…だけど。…ほら、みぬきはまだまだコドモだよ」

ぼくのその言葉に、真宵ちゃんは不愉快そうな顔を向ける。

「……そういうの、本人やまわりの人がどう思ってるか知らないけどね。
 まあ、《パパ》がそう思うなら、いいんじゃない?」

「…………………。」
 そう投げやりに言われると、今更ながら少し心配になってきた。
そして真宵ちゃんの視線が、やけに痛い。
 だんだんに真宵ちゃんの方へ傾けていた体をまっすぐ起こして、握っていた手をゆっくりと離していく。

「…………………やっぱり、帰ろうかな」

 彼女の指先だけ名残惜しげに掴んだ状態にしてそう言うと、その指が持ち上げられ、ぼくの手からあっさり離された。そのまま真宵ちゃんは手を自分の顔の横まで上げて、横に振る。

「あ、そ。じゃあまたねー、おじさん。」

「…………………」

 行き場をなくした手をポケットにしまって立ち上がり、出口の方へ1歩だけ踏み出す。
そうやって、ぼくが帰ろうというそぶりを見せているのに関わらずにどこか面倒そうにパタパタと手を振る真宵ちゃんを、振り返りぎみの姿勢で無言のまま、不満げな顔をして見下ろした。

「……なに? 帰るんでしょ?」

「あのさ…。もうちょっと、なんかないのかな。」

「なんかって、なによ?」

 ひょうひょうとした表情のまま聞き返され、無性に憎たらしくなる。

「ひきとめてくれたっていいのに」

 素直に本音を言ってみると、真宵ちゃんはさも心外だという顔をした後、
すねるようにして口を尖らす。

「だってなるほどくん。行くときは止めたって行くじゃない。
 …だから、行かないときは、何も言わなくても行かないでしょ?」

 その言葉に、思わず目を丸くする。ああ、たしかに。
止められたって、いつも信じた方に向かった。突っ走って橋からだって落ちた。
昔からそうなこと、とっくに見破られてるんだった。きみには。

「………くっくっ」

 なんだかおかしくなって、思わず笑い出すぼくに、やっぱり真宵ちゃんは不満げに頬を膨らませる。

「…なんでそこで笑うのかな」

「いや、だって…
 …かなわないな、ほんと。真宵ちゃんには」

 そう言って、もう一度彼女の前に向かい、しゃがみながらその首に腕を回して抱きつく。

「…いいの? 帰らなくて」

「まあ、大丈夫だよ。…たぶん。
 それに……。こっちの娘のご機嫌もとりたいからね。」

「残念ながら、ご機嫌は今日の一件で、斜め通り越して急降下だけどね」

「そういうときは、アレ。肩車でイチコロだよ」

「…そういえば、なるほどくん、あの子には相当しばらく会ってないでしょ。
 あのね。言っとくけど、もう重いよー? 下手したら、なるほどくんがイチコロだよ」

「そう? それなら、尚更今のうちだろ。せっかく髪も短いままだし」

 そういいながら、目の前の綺麗な黒髪をすくように掴んで口付ける。
お風呂上りのいい匂いに、完全には乾かしきれてない長い髪の少ししっとりとした感触。
心地いいなと素直に思う。

「そういえば、あの髪型の頃のなるほどくんを知らないんだよね、あの子。
 だからって今更伸ばしたときの髪見たら、泣くかもねー。あまりのとがりっぷりに」

「…ひどい言われようだな」

 うっとりしていた気持ちに水をさされ、忌々しげな声で返すと
真宵ちゃんは楽しそうにけたけたと笑う。

「でも、あの髪型でこそ《なるほどくん!》って感じだけどね。
 好きだったなー、あたし」

「…あれ? 今は?」

 くっついていた体をお互いの顔が見える位置まで離し、今度は彼女の顔を見つめる。
うかつな言葉が嬉しくて、余裕いっぱいの笑顔で。

「………知らないよ。」

 そう言ってプイッと横を向く彼女があまりに可愛くて。

「はっはっはっ」

「もう! 笑うな!」

「そう言われても、ね。」


 ……ムチャってもんだよ。



<end>



……あれ? …ええと、当初の予定では、

真宵ちゃんにくっつくなるほどくん
「あーはいはい
 今連絡帳書いてるから邪魔しないでねー」
流しながらも頭なでたりする真宵ちゃん。


…くらいの、(ちょっと違いますが
こういうイメージの
妄想だったんですが…
なんだかえらい長くなってしまいました。

4でほとんど出てこないのは、
むしろ好きに妄想してOK!と前向きに受け取って妄想しまくりです。
(ていうか正直、下手に出てくる方が、どうなっちゃってるのかはっきりしすぎて
 恐いなと思ってたので(だって綾里関連これ以上ゴタゴタされたらますます可哀想で)、そうじゃなくてよかったです…。)


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以下、ものすごいどうでもいいマイ設定ですが。

この話の成歩堂と真宵ちゃん、7年前は普通にくっついていたつもりです。
(基本的には「
まよなるまよ※(何故か15禁)」の話そのままというか…)

で、だけど子どもできた途端、真宵ちゃんがその事実自体は告げないまま里に帰っちゃって、
「しかたないな、そのうち迎えにいこう」となるほどくんは思っていたけど
そのまま、あの裁判で捏造によりバッジ失ってその上みぬきちゃんの養父に…。
というつもりです。
で、久々に会いにいったら真宵ちゃんの大きいお腹見ちゃって、びっくりしつつも
「…うすうす、そうじゃないかと思ったんだ…」とか。


「真宵ちゃん、……ひどいな、やり逃げなんて…」
「っ! な、なんてこと言うのよっ!」
「だってこれじゃあ、ぼくのこと、ホントに『子どもさえできれば用済み』、みたいじゃないか…」
「違うよ! だって話したらなるほどくん、『責任とって結婚』とか言いそうだから…」
「それの何がいけないんだよ」
「だって、あたし、家元にならなきゃいけないし。『成歩堂』にはなれないから…」
「…そんなの、いざとなったら、ぼくが『綾里』になれば…」
「それはダメ!」
「……真宵ちゃん?」
「…だって、だってあたし……
 これ以上、なるほどくんを綾里家のことに…巻き込みたくないんだよ…」
「(…………………
  ……この子は、何を今更……)」(脱力しながら)

とかいう展開は4発売前からも妄想していました。なんというか、すみません。
で、3までの時点の妄想だったら、上記の展開になってもなるほどくん、
真宵ちゃんのそばにいられるようにもっと頑張ってくれるとは思うんですけど。
でも、4のようにみぬきちゃんを引き取ることになった時点で、それは難しくて…。
という、妄想から、自然にできてしまった設定の話でした。

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…それにしても、自分がどうしてここまで真宵ちゃんを相当大好きなのか、
たまに、自分でも不思議になります…。(なるほどくんは主人公ですし、他いろいろ好きなんで、まあわかるんですけどね。)

up<2007/04/22>