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霊界にて審判の門を占拠したテロが解決した後、幽助達とともに飛影も数日の間、人間界で過ごしていた。といってもその多くの時間は適当に見繕った木の上だったのだが。

その日も飛影はいつものように木の上で睡眠をむさぼっていた。が、何かの気配を感じ取り瞬時に起き上がる。気配を探ったところ、それはよく知っている妖気だった。飛影は戦闘的な警戒態勢を解除し、替わりに精神的な警戒を更に強めた。近づいてきたのはいまだ自分が兄ということを知らずにいる、妹の雪菜だった。

「飛影さん、少しいいですか?」
雪菜は普段と同じ優しい口調で、だが同時に少し緊張した様子で飛影に問い掛けた。そのいつもと違う雪菜の様子に気がつきつつも、飛影はいつもの調子のまま冷たく答える。
「・・・何の用だ。」
「飛影さんにお聞きしたいことがありまして・・・。
飛影さんには私の氷泪石を預かっていただいてますが、
・・・今、それとは別の氷泪石も持っていますよね。」
その言葉に飛影は木から落ちそうなほど動揺したが、それを感じ取られないようなるべく平静な様子で「何のことだ。」と、わからない振りをした。しかしそれは甘かった。
「ごまかされても無駄です。氷女は氷泪石に関しては他の何物以上に精度の高い感覚を持っています。それも自分の氷泪石なら尚更、判別できない訳がありません。」
しまった、と飛影は思った。これは持ってること自体はごまかしきれない。
くそ、普段なら俺のは躯にくれてやったがら平気だったものを。
あの野郎、お守り代わりだとかふざけたこと抜かして押し付けていくからこんなことに・・・
平静を保つために頭の中で始めた原因究明によって余計に腹を立てつつ飛影は沈黙したままだった。雪菜は更に問い掛ける。
「まさか飛影さん・・・兄さんを見つけました?それとも・・・それを隠すということは・・・」
「これは躯が持っていた。お前の兄は知らんな。」
何を言われるかわからず、さえぎって飛影は半分事実を言った。
「躯って・・・飛影さんがお仕えしている、あのかつての『三竦み』のお一人ですよね。
その躯さんが何故それを・・・」
「支配国の貢物だそうだ。」
「あ、なるほど・・・」
そこで会話がしばらく止まった。だが雪菜は立ち去ろうとはしなかった。
その様子はまだ腑に落ちない点があるように見え、飛影はこれ以上ぼろを出さないよう更に緊張を高めた。が、雪菜はひたすら沈黙を続けていた。
「・・・なんだ、まだ用があるのか?」
いつまでも黙っている雪菜にしびれを切らして飛影は自らたずねる。
「はい、あの、ですが今それを躯さんから飛影さんに渡されているということは・・・ひょっとして・・・」
「・・・ただ預かってるだけだ。」
すでに妙に強い口調になっていることを飛影は自覚できなくなっていた。
「・・・本当に預かってるだけですか?
・・・例えそうだとしても・・・何故躯さんは飛影さんにそれを?」
「知らん。疑うなら勝手に疑え。」
そう言って飛影は雪菜と逆方向を向きながら、木から落ちないように気をつけつつまた寝る体勢に入っていた。これ以上ぼろを出さないには、いっそ寝た振りが一番だ。
「疑うだなんてそんな・・・。私はただ・・・」
「・・・・・・ただ、なんだ?」
少しだけ焦っている雪菜の口調につい無視はできず、向こうを向いたまま問い掛ける。

「ただ・・・実は以前に氷泪石をお渡ししたときから、飛影さんの気性からして『躯さんの下に甘んじてるだけでは物足りずに反旗を翻して、結局は躯さんに処刑されてしまうんじゃないか』と心配していたのですけれど・・・」
なんだかすごく余計な、というか手酷い心配をされていたことに、飛影はまたも体勢を崩しそうになったがなんとか持ち直した。その様子ににこにこしながら雪菜は「ですが、」と続ける。

「そんな風に隠すほどの深い仲になられたなんて。
いらぬ心配でしたね。 お幸せに。」

予想外の返答に、飛影は木からまっ逆さまだった。



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◆コメント◆
・・・アホな話で失礼しました・・・。しかもなんか、わかりにくいような・・・。
でもこの兄妹の絡み大好きです。
というかこの雪菜はかなりわかっててやってる気がしますね。
天然でも腹黒でも雪菜は好きなキャラです・・・一応私的な基本は天然路線ですが。
というかこれじゃ飛影バカすぎですね(笑)。いくらなんでももうちょっとはうまく言い訳できるんじゃないかと・・・
思うようなそうでもないような。←どっちだ。





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